二次元電気泳動で分離したタンパク質の「配列分析」のこつ
三菱化学生命科学研究所 大森 彬

 二次元電気泳動で分離したそれぞれのタンパク質のスポットを同定するためには質量分析法またはエドマン分析法が利用されている。エドマン分析法では未知のタンパク質を含め、広範囲の性質のタンパク質を分析できる利点がある。しかし、分析の感度と信頼性を高め迅速に分析するためには、分析に至る周辺技術の先鋭化が重要である。タンパク質の性質は多様であり、すべてに共通な分析法があるわけではない。プロテオーム解析には、あらゆる性質(分子量、疎水性、等電点、修飾)に対応できる数多くの分析法を駆使する必要がある。
 最新のシーケンサーでは十分な管理のもとでは0.1-0.2pmoleのペプチドから10-20残基の配列を分析することが可能である。このためには5-10pmoleのタンパクが必要であり、これは分子量20-100kDaの場合、0.1-1μgに相当する。また、タンパクを消化してペプチドを得る方法として in gel 消化法、on membrane 消化法、高感度クリーブランド法があり、それぞれ利点があるのでうまく使い分けることが望ましい。ペプチドを分けるには一般的にはHPLCが用いられるが、このためにマイクロボアカラム、キャピラリーカラムを用いることで0.1-0.2ngのペプチドを正確に分取することが可能である。また、適切なサンプル調製法と濃縮法を用いることで不必要な精製操作によるロスを防ぐことができる。これらの方法とその応用について紹介する。